第260話 キミはだれ?

「そっちは、どうだ?」

 ジュンペイは、洗面所の床が滑ることなど、まったく気にする

ことなく、軽やかに駆け寄って来た。

「ちょっと待ってね」

ひと言かけると、スルスルスル…

上り棒の要領で、モップの棒を伝って滑り降りた。

やはり上りよりは、滑り降りる方が簡単だ。

もっとも、ズボンがすれるのが困りものだけれど。

「こっち、こっち」

ジュンペイに手を振った。


「ねぇ、そこに、何かあった?」

 ジュンペイが声を張り上げる。

「うん、鍵を見付けた」

楽しそうにうなづくと、

「おい!」

なぜかジャックが、裕太の腕を突っつく。

「カギ?」

その時ようやく、ジュンペイはジャックの存在に気付く。

「コイツ…誰だ?」

顏をしかめると、ジャックをじぃっとにらみつける。

「誰って…この人は、ジャック!

 ジャックと豆の木のジャックだよ」

有名だろ?

知らないの?

裕太はジュンペイに、ジャックを指し示した。

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