第69話 サイコパス、悪のささやき…
「キミの大切な友達は…もう手の届かない場所にいる。
あきらめて、投降するんだな」
不気味な声で、ヒヒヒと笑う声が、天井一杯に広がると、
ジュンペイはぐっとこぶしを固くした。
ここは、ガマンだ…
相手はここではなく、安全な場所にいる。
ここにおびき出すか、もしもここに、パチンコがあったら、
こんなカメラなど、粉みじんに壊してみせるのに…
「余計なことは、考えない方がいい。
しょせん私は、君たちの相手になるような、レベルではないのだ」
ピシャリと冷たい声で言い放つと、まるで監視カメラから、
ホノグラムのように、ドクターの姿が、かすかに見えるような
錯覚を覚えた。
「おや?そしてキミは…なんで檻から、出ているんだ?」
目ざとくその声の主は、翼を持つ男がいるのに気付いたようで、
いきなり声を荒げる。
「アンタ…生きていたのか?」
さらにマリさんがいるのも気付くと、こわばった声を出す。
(えっ、知っているの?)
ジュンペイは、マリさんの方を見る。
「ええ、残念ながら、まだくたばっていたりはしないわ。
この通り、ピンピンしているの。
あなたこそ、ずいぶん偉くなったようね!」
大出世じゃない。
マリさんは、ずぃっと前に出ると、にっこりと微笑む。
「そうか、アンタか…」
それが、どういう意味だかは、わからない。
だが…少なくとも、このドクターとマリさんの間に、何か因縁が
ある、ということだけは、ジュンペイにもわかった。
「それにしても、キミ…あれほど特別扱いしていた、というのに…
私を裏切ったのか?」
ショーンに向かって、やや悲しそうな声を出す。
だがショーンは、バサリと翼を揺らすと
「私はあなたに、頼んだ覚えはない」
ピシャリと冷たく言い放った。
ひりつくような空気の中で…
ドクターは、大きく息を吐いていた。
「どの口が、そんなことを言えると思っているのか!」
押し殺した声が、天井から響いて来る。
(ヤバイ!)
すぐにジュンペイは、ショーンを巻き込んでしまったことを、
悟った。
マリさんがショーンを見ると、黙って彼は頭を振る。
そうしてジュンペイに向かって微笑むと、
「さぁ、キミの友達を、助けに行こう」とささやいた。
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