第15話 引っ込め、ドロボー?
「えっ?」
差し出す手を見ると…裕太は大切なことを思い出した。
「ねぇ、つかぬことを聞くけど…
1000って、円?」
「はっ?」
「ドル?フラン?ルピー?ギルド?それとも元?」
「はぁっ?」
いきなり何を言い出すんだ、とパンダの着ぐるみは、目を大きく
見開く。
オデコの汗をぬぐうと、パンダの顏の部分を
「あぁ、熱い!」と脱ぎ捨てて、バッと顔を突き出すと
「あなたね!何を言ってるの?」
大きな声で、子供たちの前に立ちふさがる。
水色の髪の毛が、ペタリとオデコに貼り付く。
少しきかん気な瞳は、緑色。
クリーム色のなめらかな肌。
まるで人形のようだ…と裕太はポカンとした。
「こらぁ~このドロボー!」
「つかまえろ!」
突然パンダが大きな声で叫ぶので、一瞬裕太は何のことか
わからなかった。
「早く!」
ジュンペイが裕太の手を引くと、
「えっ、おねえさーん!
ボクたちまだ、子供なんだよ。
しかも小学生なんだよ」
子供料金とか、試食とかないの?
お願い、と手を合わせると、目一杯媚びたまなざしを向けた。
「本当に…困った子ねぇ。
でも…悪いけど、警察には言うわよ」
ダン、と大きく足を広げて、腰に手を当てる。
「お金、持ってないの?
お金がないのに、食べたって言うの?」
とがめるようにして、彼女が言う。
ジュンペイは、ムッとした顔を突き出すと
「いや、まだ食べていないしぃ」
唇を突き出して言う。
あまりの迫力に、裕太はたじろぐ。
「そういうのをね、ドロボーって言うのよ」
「そうそう!お母さんに、聞かなかった?」
「私たち…ただ働きしたって言うの?」
口々に、そのお姉さんたちが裕太たちを取り囲んで、文句を言う。
グルリと囲い込み、逃げられないようにと、3人でしっかりと
ブロックする。
ヤバい!
裕太はジュンペイを見る。
これは、絶体絶命のピンチだ!
こんなトコで…無銭飲食で捕まるのか?
一気に裕太は青ざめた。
「あなたたち…何を騒いでいるの?」
先程まで、裕太たちの後ろにいたサキアが、裕太たちの傍らに来た。
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