第85話 サイコパス VS 冒険少年

 檻を出よう…

しばらく、ジタバタとしていた裕太。

ガラガラとロボットの運搬車が、檻を運び込んでいるのが

見えた。

「さぁ、そろそろお遊びはおしまいだ。

 キミは、どうして欲しい?

 クローンを作るか?

 それとも…サルとのかけ合わせをしようか?

 あるいは…他になりたいのは、あるか?」

天井から、なおも声が降ってくると…

今度はいきなり、周りの壁がグィーンと動いた。

「うわっ!」

まさか壁ごと、動くとは思ってもいなかったので…

裕太は腰をストンと落として、ただただ驚いている。


 一体、どうなっているんだ?

 今度は、なんなんだ?

ツルツルとした真っ黒な壁は、まるでそれ自体が、

意志を持っているかのように、変幻自在に動いている。

 それを檻の中で、裕太はじぃっと見ていた。

「さぁ、怖がらなくてもいい!

 キミを、この世で2つとない、素晴らしいものに

 してあげるから!」

そう叫ぶ声がする。

(コイツは、狂ってる…)

裕太は心の中で、つぶやいた。


 チンパンジー?

 馬?

 いや、牛か?

 ワオキツネザル?

カツカツと靴音を響かせながら、白衣を着た男性が

近付いて来る。

「うわっ!」

檻の中で、裕太は固まる。

その顔を見て、「ふーん」と言うと

「やっぱりキミは、サルだなぁ」

ドクターが、ヘラヘラと笑う。

 本能的に、(これは、ヤバイ)と裕太は身の危険を

感じて、彼をキッとにらみつけると…

「ボクは、サルじゃない!

 ボクは、人間だ!」

キッパリとした、大きな声で言い放った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る