第43話 いよいよ実験開始だ!

 なんだっけ?

 混ぜるな、危険?

よし、これだ!

満足そうに、用具入れから目的の物を取り出すと、慎重に

ドアを閉める。

それから個室に入ると…

便器の上で、教えられた手順で作業を始めた。


「おーい、まだかぁ?」

 早速入り口の方から、声がする。

「あっ、あともうちょっとぉ」

ジュンペイは残った材料を、あわててバケツにぶち込むと

(こんなので、うまくいくのか?)

最後の仕上げとばかりに、裕太から手渡された、粉をパラパラと

ぶち込んだ。

「今、行くよ~」

そうして、便器の脇に置いた。

「おーい、まだかぁ?」

 しびれを切らしたのか、入り口に男がのっそりと姿を現す。

「もう、行くよぉ!」

「しょうがないなぁ」

チェッと舌打ちをすると、男はおとなしく入り口の外に

引っ込んだ。


 ひ~、ヤバイ、ヤバイ!

ジュンペイは、あわてて手洗いの所まで行くと、しばらくして

異臭が漂い、モクモクと煙が立ち上ってきた。

「もう、いいかぁ?」

手を洗うジュンペイのすぐ隣に、逃すまいと、すかさず男が貼り付く。

「お待たせ~」

ペッペッと手をズボンでふくと、

「おまえ、汚いなぁ」

意外に潔癖症なのか、男は顔をしかめた。

 だがジュンペイは、そんな細かなことなど、気にはならない。

それよりも…自分のしたことが、首尾よくいったのかが気になっている。

さり気なく、トイレから出ると、へへへ…とごまかし笑いを浮かべた。


「ん?なんだ、あれ」

 モクモクと刺激臭が、してくる。

「あっ」

思わずジュンペイが、声をもらす。

煙がすぐ近くまで、迫ってきていた。

「おまえ、何をした!」

男は顔をこわばらせ、呆然とする。

「ねぇ、オジサン!オジサンって、ライター持ってる?」

平然とした顔で、ジュンペイが聞く。

はっ?という顔になりながら、

「あ、あぁ」

まるで危ない爆弾犯を見るような目付きで、男はぎこちなくうなづく。

「今、使わない方がいいよ」

そう言うなり、ポケットに手を突っ込むと、先ほど残しておいた粉を、

煙に向かって、投げ込んだ。

ドン!

ドッカーン!

「えっ?」

 あらかじめ、詳しいことを聞かされていないジュンペイは…

さすがに予想外の展開に、腰が抜けそうになる。

「とんでもないガキだなぁ~

 やりやがったな、おまえ!」

男が血相を変えて、ジュンペイに取り付こうとする。


「ヒャー!」

 あわててジュンペイは、その手をすり抜けると、猛然とダッシュで

駆け抜けていく。

「おい、待てぇ~」

男の絶叫が、響き渡った。

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