サキアの休日…3
サキアがいきなり、思いもしないことを言うので、この
ボディーガードは、驚いたように目を見張る。
「いえ、そんな!
ボクはまだまだ、半人前ですから」
首なのか?
一瞬ドキリとする。
「そんなことはないわよ、ミスター」
このボディーガード、思いの外真面目なのだ。
ある日、サキアの元へ、若い青年がやって来ると
「下働きでも、何でもします。
だから、弟子にしてください」
いきなり現れたのだ。
サキアはもともと…弟子とか、ボディーガードを雇ったりは
しない主義だったのだ。
「それは、ムリだわ」
あっさりと断った。
「何でですか?」
だが彼は…引き下がる様子もなく、逆に食って掛かってきたのだ。
なだめすかし、居座りを決め込み…待ち伏せもして。
「あなた、いい加減にして」
ついに根負けをして、強引に付きまとうことになる。
回りもついに、ほだされて…
「いいんじゃないの?
試しに、付き人にでもしたら?」
という、そんな経過があるのだ。
「あなた…あの時、ずいぶん頑張ったわねぇ」
なんでそこまで、と思うけれども。
「強くなりたかったんです」
ミスターは、恥ずかしそうにしながら、ヘヘッと笑うと
「若気の至りです」
はなかみながらも、そう言う。
「まさか…本当に、勤まるとは思わなかったわ」
加減もせず、使い物になるかどうか、わからない…と、
下働きから、使い走り、犬の散歩まで(シェーラのことも含まれる)
ありとあらゆることを、サキアはまんべんなくさせた。
多忙なサキアのために、どんなことも弱音を吐かず…
早朝から深夜まで、駆けずり回ってくれたのだ。
「あなた、よくやってくれたわ。
そろそろ独り立ちしても、いい頃よ。
もともと、強くなりたかっただけなんでしょ?」
望むのなら、次の職場を紹介するつもりでいた。
非公表ではあるけれど、サキアはこのトオの挑戦者の一人だった。
生きて帰れた人は…1%にも満たない、と聞くけれど…
実はサキアは、この一人なのだ。
「最初はもちろん、そうだったのですが…今は違います」
毅然として、ミスターはとても真剣な瞳を、サキアに向ける。
ひたむきな視線を、まっすぐに受ける。
「まぁ、いいわ」
あっさりと、サキアは目をそらす。
「自分で、もういいと思ったら、ここを好きに離れてちょうだい」
なぜか、サキアは優しく微笑んでそう言った。
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