サキアの休日…2

「サキア様も、お寂しいのではないですか?」

 いきなり思ってもいない言葉を、かけられる。

ミスターは、サキア仕込みの腕っぷしだけでなく、教養もあり、

マナーもあり、しかも気配りも出来る人だ。

しかも子供好きときている。

(あの子たちも、ミスターにはなついていたからなぁ)

サキアはそう思い至る。

「あなたこそ!

 あの子たちがいなくなって、寂しいんじゃあないの?」

わざと、からかうように話を振る。


 このミスター。

無口ではあるけれど、ゼッタイに愚痴をこぼすことがない。

つらいとか、キツイとか、ムリだとか…

口が裂けても言わないタイプだ。

それは驚くほど徹底していて、さすがに最初の頃は…

子供たちに振り回されて、音を上げていたけれども。

「あなた…あの子たちと、うまくやっていたからねぇ」

まさか、同類?

思わず、サキアは笑う。

それが羨ましくもあり、ミスターのいいところでもある。

 自分とは、まったく違う…

珍しくサキアは、そう思う。

普段は決して、本人を褒めることはないのだけれど…

彼には、人を惹きつける天賦の才能があるのだ、とサキアは

気づいていた。

そしてそれは、自分にはないものだ、ということも。

羨ましく感じたことも、確かにあるけれど。

得ようとしても得られないし、逆に大変だろうな、とも思う。

「いえ、そんなことはないです。

 何しろボクは、子供の頃から、姉にしごかれてきていましたから」

女姉弟がいる、ということは、おぼろげながら聞いたことは、

あったのかもしれないが。


 ふと、サキアは思い付いたように、彼に向かうと

「ねぇ、ミスター。

 あなた…そろそろ、一本立ちしてみない?」

さり気ない調子で、言ってのけた。

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