第123話 境界線を越えろ!

 ポツリポツリと、石灯籠の光が並ぶ道筋を、しずしずと

歩いて行く。

さすがのジュンペイも…

この神聖な雰囲気に圧倒されたのか、今のところはおとなしく

ついて来ている。

突き当りには、ポッカリと穴が口を開けている。


「ここから先は、おしゃべりはつつしんで下さい」

クルリと振り返ると、スズカさんは鋭い声で、裕太たちに言った。

「はぁ~い」

やや間延びした声で、ジュンペイが手をあげると、チラリと

スズカさんが、鋭い視線を向ける。

「すみません…」

裕太が代わりに謝ると、

(こら!)

小声で、ジュンペイの腕を突っついた。

 白い半紙のようなものが、ヒラヒラと洞窟の入り口で、揺れている。

真っ黒な洞窟の中に、ぼぅっとろうそくの光が見えていた。

(まさか、ここに入ったら…

 もう2度と、出られなくなるのかなぁ)

裕太はふいに、不安になる。

見慣れない光景に、裕太はすっかり怖気づき、足をすくめた。

「なに?怖いの?」

裕太の様子に気が付くと、白い衣を着たジュンペイが、ヘヘッと笑う。

「うらめしやぁ~」

お化けの真似をして、ケラケラと笑う。

「こらっ!」

スズカさんが、ジュンペイをにらみつける。

「ごめんなさい」

お~っ、こわっ!と首をすくめると、裕太に向かって笑う。

「怖くなんか、ないよ!」

ムッとした顔で、裕太はフン!と背筋を伸ばす。

「そうかぁ?」

ニヤニヤしながら、ジュンペイは裕太の顔をのぞき込む。

「よっ!」

すぃっと白い衣の裾を、手で持ち上げると、洞窟との境界線を

ピョンとまたいだ。

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