第124話 竜に遣えし者…

「あっ、ちょっとぉ~」

 スズカさんが、険しい顔でにらんでいる。

裕太はあわてて、ジュンペイを追いかけると…

自然と中に、足を踏み入れていた。

入った瞬間、何とも言えない空気に包まれる…

(これは、なんだろう?)

思わず裕太は、辺りを見回した。


 ひさしのように、少し出っ張った所に、白いろうそくが

ユラユラと揺れる。

ポツポツと、まるでホタルが瞬いているようだ。

ヒタヒタとどこかから、水が染み出る音がする…

(ここって、どこ?)

裕太は思わず、そう思う。

 まるでさっきとは、別世界に入り込んだみたいだ。

どこまでも、静けさと水の音がする。

方向感覚まで、おかしくなりそうだ。


「お見えです」

 いきなりスズカさんの声が聞こえた。

裕太はあわてて、ピタリとその場で足を止める。

『ねぇ』

ジュンペイが裕太を突っつく。

『どんな人だろう?

 オバサンかなぁ~』

小声で、ヒソヒソとささやく。

クリクリとした、好奇心いっぱいの目で、裕太を見ている。

『しっ!』

裕太がジュンペイを突っつくと、スズカさんが、鋭い目付きで

にらんでいる。

『おっとぉ~こわい、こわい』

ジュンペイが大げさに、身震いをしてみせると、ピシッと両手を

垂らして、気をつけの姿勢になる。

(アイツ…また、悪い癖が出てる!)

苦々しい顔をして、ジュンペイの横顔を見る。


 穴の奥から、ゆっくりと…

白い影が近付いて来ている。

(この穴には…ボクたち、入ったらいけないのかなぁ~)

裕太はふと、思った。


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