第125話 お姉さんは、ナニモノ?

 まるで暗闇から浮き出たみたいに、光の中から、白い衣装を

身にまとった女性が現れる。

(あれ?おばあさんじゃないんだ…)

なぜだか裕太は、マリさんよりも年上の人だ、と思い込んで

いたのだ。

(ミアさんと同じくらい?

 それよりも、ちょい下?)

そう思っていると、まるで心を読むように、

「おばあさんじゃなくて、ごめんなさいねぇ」

透き通った声が、岩の中で響いた。

(まるで…卑弥呼みたいだ)

乏しい裕太の知識では、神につかえる人のイメージといえば、

そんな姿しか思いつかない。


 すっかり姿が見えると、さらに裕太はポカンと口を開ける。

その人は、栗色の髪を白いヒモで縛り、スラリと背の高い、

若くて美しい女性だ。

しかも、地下で生活しているせいか、抜けるように透き通った

白い肌をしている。

まるでそのまま、空気に溶け込んでしまいそうな…

そんな女性だ。 

 思わずジュンペイの方を振り向くと、照れくさそうに、目をそらす

のが見えた。

(へぇ~ジュンペイも、きれいなお姉さんが好きなんだ)

思わずニヤニヤしてしまう。

「わざわざ遠い所から、来ていただいて、ありがとうございます」

穏やかな声が聞こえる。

 ともすると、言葉もなく見とれて、何も言えなくなってしまいそう

だけども…

いかん、いかんと頬をつねり、何とか正常を保とうとしていた。

肝心のミナトはというと、やはり思いっきりデレデレしている。

(ちょっとぉ~ミアさんに、言いつけるぞ)

裕太はそう思うけれど、何となく気持ちはわかるので、

(これは、男同士の秘密だ)と、気付かないふりをした。


「ねぇ、お姉さん!」

 いきなり、元気なジュンペイの声が響く。

さっきまで、ボーッとしていたくせに、もうこの状況に慣れたのか?

いつものように、馴れ馴れしい口をきくので、ハラハラする。

「ちょっと、あなた!」

すぐにスズカさんの声が飛ぶ。

だがその女性は、おっとりと微笑むと

「いいのよ、どうぞ」

スズカさんに向かって、手で押しとどめると、ジュンペイをうながした。


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