第212話 不思議なスタンプ

「迷子なんです」

 そういえばサキアさんが、迷子スタンプを押して

くれたんだ、とようやく裕太は思い出す。

小さな子供じゃあないから、当然だろうが…

巨人の女は、まだ疑いの目を向けている。

「はい」

 どうだ、とばかりに、腕を掲げて見せた。


 すると、どうだろう?

予想外のことが起きた。

裕太とジュンペイの腕のスタンプが、まぶしい光を

放ち始めた。

さらにそれだけではなく、まるでホノグラムのように、

文字が浮かび上がってきたのだ。

そんなこととは、露知らず。

「なんだ、これは?」

自分の腕が、どうなったんだ?

裕太は仰天する。

もちろんこれは、正真正銘の自分の腕なのだが、一体

何が起こっているのだ、と裕太は驚いて、その光を

見詰める。

「えっ、なに、なに?」

何か面白いことでも、あったの?

案の定、ジュンペイがうわぁ~と騒ぐ。

「ね、どうやったの?どうやったの?」

自分の腕をまくり上げた。


ひゃぁ~

 嬉しそうに、ジュンペイは目を丸くすると、

「なんだ?なんだ?」

ワクワクとした目をして、裕太の真似をして、自分の腕も

さらに高く掲げる。

すると…2つの光が交差して、その光が3Dのように…

サキアさんの虚像を、空中に浮かび上がらせた。

しかも虚像だというのに、何かこちらに向かって、話しかけて

いるようにも見える。

「えっ…」

巨人の女も、さすがにサキアさんのことがわかるようで、

「わかった」

ふぅ~とため息をつく。

「疑って悪かったわ。

 どうやら、ホントのようね」

静かに頭を振ると、

「わかった、わかったから、もう腕を下ろしていいわ」

仕方がないわねぇ~と苦笑した。


 やった!

裕太は思わず、その腕をジュンペイとパチンと合わせる。

「それにしても、なぁに?

 あなたたち、迷子と言ったわね?

 迷子がなんで、こんなトコまで来るの?」

それでもまだ…納得はしていないようだ。

(それは、そうかぁ~)

「えっ」

「それは…」

2人は、声を詰まらせる。

こういう事態を、想定していなかったからだ。

 するとジュンペイが、ピョンと巨人の女に近寄ると

「だって、ここ…巨人の家なんでしょ?」

思いっきり、無邪気な声で聞いた。

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