第251話 えっ、ドロボー?

「で、どこを上るの?」

目的の洗面台まで、モップを運ぶと、ジャックはキョロキョロ

とする。

でっかい鏡は、壁のよう。

トラック並みの大きなブラシが、無造作に転がっている。

コップもビルのように、そびえている。

「いつ見ても、でっかいなぁ」

ジャックがつぶやく。

「でも…なんで、あんなところにいたの?」

裕太は思い出すように聞く。

 ジャックはクルリと振り向くと、

「ボク…巨人の大切なものを、盗んだんだ」

裕太が自分と同い年ぐらいだと見てとると、心を許したように、

打ち明ける。


「え~っ、泥棒?」

 この子、やっぱりマズイヤツなのか?

裕太は驚いた顔で、どうしようかと迷いながら、自分と同じ

背格好の男の子を見つめる。

 ジャックは茶色の髪と、深い緑の瞳をしている。

引きつる顔の裕太を見ると、

「ちょっと、そんなに驚かないでよぉ」

ヘヘヘッ

バツの悪そうな顔をして言う。

「だってさ、うちはとっても貧乏で…仲良しだった雌牛のメアリー

 を売りに、街に出かけたんだ…」

ジャックは淡々と、身の上話を始めた。

それは…まぎれもなく、昔絵本で読んだ豆の木の話だった。




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