サキアの休日…45

 翌日、予定通りサキアは、トオへと向かった。

その当時は、まだ受付などなかったので、トオの重たい石の扉を

開けて、中に入ったら、それがスタートだ。

「よし、かかって来い!」

 サキアは長い髪を、スカーフでギュッと結ぶと、ミナトのくれた

お守りを、ギュッと握り締めた…

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ねぇ、マリさん。

 私が死ぬと思った?」

 地下の社へと向かう途中、サキアは自分が最も信頼する、この年長の

女性に話しかける。

「バカねぇ~

 死ぬと思うわけ、ないじゃない!

 あなたは…私の大切な娘なんだもの」

そう言うと、ギュッとサキアを抱き締める。

「サキア…幸せだった?」

これまでのことを、彼女に問いかける。

「もちろん、幸せよ!」

 色々あったけどね…

心の中で、そう思う。


 トオから無事に生還を果たして、いきなり押し寄せた、色々な事柄…

成功者への賛辞と、群がる人々。

支配者。

そうして彼女は、何かを失った…

後世のためにと、言われるままに、血液サンプルを採られ、

卵子を採取され、後で人形として、クローンが作られた、とも聞く。

 さらには、援助者も現れた。

「キミに、生涯変わらぬ援助をしよう。

 その代わり…条件がある」

提示されたのは、過去からキッパリと、手を切ること。

地下の暮らしには、戻らないこと。

養女となり、自分の事業を引き継ぐこと…

などを、提示された。

もちろん、すぐに飛び付こうとはしなかったけれど。

だけども、他に彼女には、選択肢がなかった。

だが…その代わりに、

「絶対に、地下の人たちに、手を出さないこと。

 マリさんたちにも、危害を加えないこと」

を約束させて、文字通りサキアは、生まれ変わったのだ…


「もちろん…幸せよ」

 ただしそれは、もう以前の自分との決別ではあったけれども。

そのひと時だけは、マリさんに甘えるようにして、フワッと微笑む。

「私は、いつだって、変わらないわ」

いつか、両親の想いを引き継ぎたいのは、事実だ。

だが…今は、その時ではない。

昔のように…マリさんの肩に、頭を預けていた…

 


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