サキアの休日…44

 こんな風に取り乱すサキアを、初めて見た…

ミナトはダラリと手をたらし、サキアにされるがままに、

立ち尽くす。

「ミナト!あの時、誓ったでしょ?

 何があっても…必ず、キヨラを守って!

 あの誓い…忘れたの?」

 

 それは、幼い頃の約束だった。

サキアとミナトが、初めてキヨラのいる社に潜り込んだ時、

大人たちに見つからないようにと、姿を隠し、三人で手を

つないで、指切りをしたのだ。

「覚えていたんだ…」

ミナトはため息のように、ほぅっとつぶやく。

「当たり前でしょ?」

 忘れるはずがない。

だってそれは…生まれて初めて出来た、大切な友達だったから。

サキアはスッと、かぶっている帽子で、顔をスッポリを覆い隠す。

こんな情けない自分の姿を…誰にも見られたくない、と思って

いたからだ。


「サキアの気持ちは?」

 だが、逆にミナトが近付いて、サキアの肩に触れる。

「サキアは、どうなんだ?

 本当に…それで、いいのか?」

 三人は、同志だった。

大人たちに囲まれて、自由のない暮らしの中で、わずかに麓の学校に

行ったり、外に出たり…

少しでも、自由に生きようと工夫して、地下で過ごしていたのだ。


「私?私の気持ちは…」

 わざと明るく、サキアは口を開くと、フッと言葉を失う。

ぐぃっと、ミナトが彼女の肩を、抱きすくめていた。

「わかった。もういい。好きにすればいい…」

グッと彼女を引き寄せると、

「だけど…絶対に、死ぬな!」

それ以上、ミナトは、何も聞こうとはしなかった。

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