第22話 あなたはナニモノ?

「あそこは、力自慢の男たちでも、容易には出られない場所だ。

 遊びに行くような気持ちでいるのなら、やめた方がいい。

 何があっても、知らないぞ」

 その筋骨隆々なボディーガードは、重々しい口調で言う。

どうやら本気で、心配してくれているようだ…

「なぁんだ!」

ジュンペイがバカにしたように、大きな声を上げる。

「オジサン、怖いんだ!」

ケラケラと笑う。

(はっ?何を言っているんだ?

 このガキは!)

 いつもはおとなしいボディーガードも、さすがに一瞬、ムッとした

顏になる。


 その頃サキアは…ある男に呼び出されていた。

滅多にこの番号から、電話がかかることはない。

(まいったなぁ~今度はなに?)

 まさか…子供のお守りをしている、なんてことが、バレた…というのか?

あまり気乗りのしないまま、とある白亜の建物へと向かった。

そこは、一面総ガラス張りの、かなり前衛的な外観だ。

なんでも有名な建築家が手掛けた、ということで…

セキュリティーは万全で、外部からの侵入は、ほほ不可能、といわれている。

窓もはめごろしで、強化ガラスを使用している。

いかにも、国家機密を扱っているか、最先端の技術を研究している…

と、周りにアピールしているようにも見える。

 本来ならば、こういう場所は、ボディーガードと行きたいものだが、

子供たちだけにすると、何をしでかすかわからない…と彼女は

危ぶんで、彼に託してきたのだ。

さらには、相手側から

『是非、おひとりでお越し下さい』

と言われたため、しぶしぶタクシーを使って、ここまで赴いたのだ。


(何度来ても…あまり好きになれない場所だな)

 ここへ来て、サキアはそう思う。

この世界で、苦手なことなど、あまり存在しない彼女だが…

今から会おうとする人と、この研究室だけは、好きになれない。

(いや、むしろ…好きな人って、いるのか?)

それはよっぽどのサイコパスか、変態だ!

 だがそうも言ってはいられない。

なぜなら相手は、サキアにとって、大切な顧客でもあるからだ。


「ま、嫌なことは、さっさと済ませるにかぎるな」

そう心に決めると、早く済ませて、ミスターに今日の報告を聞いて、

子供たちと合流しよう…

そう気を取り直すのだった。

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