第376話 すごい、すごい!

 ファルコンは、ショーンの後を追って、グングン上昇している。

どこまで上がっても、そこからずっと先があり、果てしなく続いて

いるように見える。

(もしかして…このまま、終点がないのでは?)

裕太はふいに、いわれもない恐怖を覚える。


 だがジュンペイときたら、怖がるどころか、ヒャーヒャー言いながら、

向かい風に向かって、雄たけびを上げている。

(のんきなもんだなぁ)

自分がジュンペイだったら、こんな風に、はしゃいだりしているだろうか?

何となく、複雑な気分になるが、ひたすら裕太はジュンペイの背中を

見つめる。

 まるで、高速のエレベーターに乗っているみたいだ。

だが、エレベーターならば、必ず終点があるはず。

加速するごとに、ドンドンドンドン地上が遠ざかる。

(ここから落っこちたら…一発だなぁ)

そんなゾッとするようなことが、頭に浮かぶ。

下を見下ろすだけで、目がくらみそうだ。

(それにしても…ジュンペイって、怖くないのかなぁ?)

そういう弱みを、見せたことがない…

きっと、ジュンペイは遊園地に行っても、ジェットコースターとか平気で、

手放しをして、乗るのだろう。

裕太はこう見えて、絶叫系の乗り物は苦手なのだ。

(それがアイツにバレたら、きっとバカにされるだろうなぁ)

そんなことを思いながら、上を見上げた。

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