第352話 サキアさん、どうしたの?

「サキアさん?」

 確かめるようにして、裕太が聞くと

「何か、大変だったみたいね」

自分の影武者のことを、すでに承知しているようだった。

まさか、隠しカメラでもあるのか?

何でだろう?

シェーラが言っていたことは、まんざら嘘ではなさそうだ。

「で、ジュンペイは?」

彼女がすべてを、見透かしているようなので、試しに裕太が

聞いてみると

「あぁ~」

そのことね。

さして慌てるでもなく、余裕の表情を浮かべる。

「あの人が、今、探しているわよ」

裕太に向かい、ニッと笑う。

この感じ…

やはり、本物のサキアさんだ。

「よかったぁ」

思わずつぶやくと、

「なに、さっきから、おかしなことを言ってるのよ」

そう言う割りには、サキアさんは機嫌のいい顔をする。

その証拠に、鼻歌を口ずさんでいる。


「あの人って、ショーン?」

 サキアさんは、どこまで知っているのだろう…と思う。

「もちろん、そうよ」

他に、誰かいる?

フフンと笑うと、帽子を目深にかぶり直す。

「でも…間に合えば、いいんだけどなぁ」

ポンとさり気なく、気になることを言う。

「間に合うって?」

裕太は何だか、妙な胸騒ぎがする。

「まあ、あの人がいるから…大丈夫かなぁ」

はぐらかすように、クルリと回ってみせると、

「ショーンの力の見せどころね!」

楽しそうに、ユラユラと揺れてみせた。



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