第351話 そこいたのは…

 ファルコンは黙々と、ショーンの消えた方向を追いかけて、

スルスル~と建物の壁に沿って、上を目指す。

「うわぁ~楽ちん、楽ちん!」

上機嫌な裕太だ。

これだったら、一気に屋上へ行けるかもしれない。

希望が出て来た。

(なんだ、この手があったかぁ)

そんなのん気なことを、思うけれど…

(とにかくジュンペイを、探さなくちゃ!)

裕太は気を引き締める。


 巨人の家が、トオの1部ということもあるけれど、驚くほど

スムーズに、トオへと到達する。

目の前に、例の不思議な光りを放つ建物が、間近に迫ってくると…

「こっちよ、こっち!」

何者かが、こちらに向かって、手招きをしている。

「だれ?」

 どうも、ショーンではなさそうだ。

よく見ると、長い黒髪が風にたなびいている。

一瞬、シェーラか?と身がまえるけれど、今度こそサキアさんのようだ。

(今度こそ、ホンモノだよな?)

ひそかに裕太が、そう思っていると…

なぜか彼女は、両手をヒラヒラと揺らして、

「オーライ、オーライ、オーライ」

車の車庫入れのように、ファルコンを誘導してくれてるようだ。

だけど…

(ファルコンは、トラックでも、バスでもないけど?)

まさかサキアさんって、天然か?

御茶目だなぁ~

ファルコンの背中で、クスッと笑う。

でも…体が大きいせいか、うまく中に入れるようにと、気を遣って

くれているのだろう。

「ストップ!」

パッと彼女が手を広げると、

トン!

裕太はファルコンの背から、飛び降りた。

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