第350話  それって、テレパシー?

 どうやら耳から聞こえるのではなく、裕太の脳に直接話し

かけているようだ。

それは、不思議な感覚だ。

確かトオに向かう前、ミナトに教えてもらった、テレパシー

というものなのか?


(そうだよ、ユウタくん)

 再び声を感じる。

しかも耳にも心地よい声だ。

「ねぇ、ジュンペイは…どこに連れて行かれたの?」

思わず顔を上げ、声に出して聞くと、すぐに

(思うだけで、いいんだよ)

カサついた音が聞こえる。

どうやら笑っているようだ。

(たぶん、トオの上の方だ…)

音として聞こえるというよりも、ぬくもりのある、力強い声の

ようなもの…

感情を信号にした感じなのか?

(それにしても…ファルコンって、言葉がわかるんだ)

それは、初めての感覚だった。


 とにかく、ジュンペイを助けなくては!

裕太は心に強く、決意をする。

怖いとか、恐ろしいとか、そんなことは一切なく…

ただひたすら、ジュンペイが無事でありますように…

そう願うばかりだ。

 ひと足先に行ったショーンは、シェーラの後を追って、トオに飛び

込んだきり、姿が見えない。

「ジュンペイ…大丈夫かなぁ?」

極度の緊張に耐えられなくなと、ファルコンに話しかける。

もちろんファルコンにも、どうにもならないのだけれど。

誰かに言わないと、最悪なことばかり、考えてしまいそうで…

裕太は甘えるようにして、その背に頭をもたせかけた。


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