第353話 サキアとシェーラ

「ねぇ、間に合うって、どういうこと?

 力の見せどころって、なに?」

 何だかどうも、サキアさんは…

裕太のことを子供扱いをして、回りくどい言い方しか、

してくれない。

「うーん」

どうやら、言っていいものかどうか、迷っているようだ。

裕太の顔を、チラッと見ると、

「とにかく、シェーラのことは…

 ショーンにまかせておけばいいわ。

 あの子…ムキになるところがあるからねぇ」

考え込みながら言う。


 サキアさんの犬っていうのは、本当なのだろうか?

シェーラはやたらと時間にうるさいし、気難しいところも

あるけれど。

「あっ」

 突然思い出したように、裕太が声を上げると

「確か…サキアさんの半身って、言ってたけど?」

どういう意味か、わからないけれど、それって本当なのか?

思わずそう言う。

「あら、あの子、そんなことを言ってたの?」

サキアさんのポーカーフェイスが崩れて、珍しく驚いている

ようだった。

いつもは、人を食ったような、薄笑いを浮かべているのに、

何でなのだろう?

裕太はじぃっと、彼女のことを観察した。


「確かに…あの子は、私の友達だったわ」

 妙に気になる言い方をする。

「でも、あの子…私になりたかったのね」

何だかしみじみとした、言い方をする。

 何なんだ?

 どういうこと?

しばらく考え込んだ後、急に何か、心に決めたように、サキアさんは

顏を上げる。

「だけど、あの子に振り回されたら、ダメよ!

 ジュンペイくんはきっと…オトリにされているのよ」

何か思い当たるフシがあるのか、サキアさんは自信満々に

そう言い切った。

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