第354話 習性

 ホント、卑怯よね?

裕太に向かって、サキアさんは楽しそうに話す。

(何だよ、それ!

 飼い主ならば、責任をもって、どうにかしてくれよ)

シェーラが、サキアさんの元飼い犬ならば…例え『元』でも、責任が

あるのではないか?

のん気にしているサキアさんを見ると、裕太は大きな声で文句を言いたい

気持ちを、必死で押さえ込む。


「ねぇ~ジュンペイは、どこ?」

 おそらく、何かを知っているらしいサキアさんに、裕太は問いかける。

だがサキアさんは「さぁ?」と肩をすくめるばかりで、まったく相手には

してくれない。

「え~」

思いきり、ガクッと肩を落とす裕太に、

「でも…」

思わせぶりに、チラリと視線を向ける。

「アイツの行動パターンは、大体把握している」

素っ気なく、ポンとそう言う。

「えっ、ホント?」

思わず顔を上げると

「えぇ」

サキアさんは、意味あり気にニヤリと笑う。

 なに?

 もったいぶってないで、早く教えてよ!

裕太ははやる気持ちを押さえて、サキアさんを見上げる。

「アイツはおそらく…狩りの習性があるんだ」

なぜかキッパリと、裕太にそう告げた。

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