サキアの休日…17

「あの時…たくさん、人がいたのに、みんな遠慮して…

 話しかけてくれなかったの」

 しみじみと、噛みしめるようにサキアが話すと、

「あら!そんなことは、ないわよ。

 みんな、何かと気を遣っていたわよ」

マリさんが、弁解するように言う。

「ううん」

だがサキアは、まるで子供のように、大きく頭を振ると

「ちゃんと目を見て、話しかけてくれたのは、マリさんだけ

 だった」

キッパリと言い切った。


 あの時のことは、よく覚えている。

たった一人、取り残されて…

ひどく心細かったことを。

「あの時ね、私、どうなるのか、全然わからなかった。

 そうしたら、マリさんが言ってくれたの。

 『私の家に来る?』って。

 まるで、これから家に遊びに来ない?みたいな、いつもの

 話し方で。

 だから、私もすぐに『うん』とうなづいたの。

 そうしたらきっと…いつか、ママやパパが迎えに来てくれる…

 と思っていたのよ」

ポツポツと話すサキアに、

「そうだったの…」

初めて彼女の気持ちを、聞いたような気がする。

マリさんは、悲しそうに微笑むと

「ごめんね。いっそのこと、あなたを…本当の養女にして、

 引き取ってあげれば、よかったのかしらね」

彼女を見つめた。

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