サキアの休日…17
「あの時…たくさん、人がいたのに、みんな遠慮して…
話しかけてくれなかったの」
しみじみと、噛みしめるようにサキアが話すと、
「あら!そんなことは、ないわよ。
みんな、何かと気を遣っていたわよ」
マリさんが、弁解するように言う。
「ううん」
だがサキアは、まるで子供のように、大きく頭を振ると
「ちゃんと目を見て、話しかけてくれたのは、マリさんだけ
だった」
キッパリと言い切った。
あの時のことは、よく覚えている。
たった一人、取り残されて…
ひどく心細かったことを。
「あの時ね、私、どうなるのか、全然わからなかった。
そうしたら、マリさんが言ってくれたの。
『私の家に来る?』って。
まるで、これから家に遊びに来ない?みたいな、いつもの
話し方で。
だから、私もすぐに『うん』とうなづいたの。
そうしたらきっと…いつか、ママやパパが迎えに来てくれる…
と思っていたのよ」
ポツポツと話すサキアに、
「そうだったの…」
初めて彼女の気持ちを、聞いたような気がする。
マリさんは、悲しそうに微笑むと
「ごめんね。いっそのこと、あなたを…本当の養女にして、
引き取ってあげれば、よかったのかしらね」
彼女を見つめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます