第13話 君たち、持ってるかい?

「くださぁい!」

 いの一番に、ジュンペイが駆けつけると…大きな声を張り上げた。

「いっちばーん!」

と叫んで、屋台にタッチするので、何かと勘違いしているのか?

「あっ、さっきの子!」

「また、来たの?」

目ざとく、暇そうにしていたお姉さんたちに、声をかけられる。

「いいじゃない、何度来ても!」

「それにしても、よく食べるわねぇ」

「底なしね」

「美味しいのかしら」

女たちは固まって、ヒソヒソ話をしている。

「たこ焼き、もう1つ!」

すかさず追いついた裕太も叫ぶと

「たこ焼き、もう1つ!」

すかさずジュンペイも叫ぶ。

「えっ、また食べるの?」

呆れた顔をする裕太。

「いいじゃないかぁ、別に」

「大食い競争するのか?」

「いいねぇ」

ケラケラと突っつき合う2人を見て、

「じゃあたこ焼き2つね?」

威勢のいい声を上げて、パンダの着ぐるみを着たお姉さんが、

奥のメイド服の女の子に、声をかけた。

「へい、まいどぉ~」

いつの間に、ねじり鉢巻きをすると、袖をまくり上げた。


「へぇ~」

 裕太は身を乗り出すと、その手付きを見つめる。

メイド服のお姉さんは、手際よくたこ焼きをひっくり返す。

「お姉さん、中々上手だねぇ」

それは意外だったので…無邪気な声を上げて、手をたたく。

「まぁね」

髪に軽く手をやる。

「ちょっとぉ!目を離さないでよ。焦げるわよ!」

彼女ばかり褒められるので、やきもちを焼いたのか…

パンダの着ぐるみが、尖った声を出した。

「大丈夫よ!」

ホイホイと型の中で転がすと、ジュージューといい匂いが充満する。

裕太の口の中で、唾がじゅわっとたまってくる。

「たまんないなぁ」

思わずつぶやくと、

「な、美味しそうだろ?」

ジュンペイはニヤニヤしながら、裕太の顔を見る。


 先ほどからボディーガードは、子供たちの背後で、辺りを見回して

いる。

「ん?」

目の端で、キラリと何かが光ったような気がした。

「サキア様!危ない!」

子供たちの後ろにいた、サキアの前に回り込むと、素早く飛び出す。

チカッと何かが光り、ヒュン!と飛んできた。

「君たち、危ない!」

「頭を下げて!」

押されるようにして、ボディーガードに背中を押されると、

ジュンペイはその場にしゃがみ込むと、裕太の腕を引っ張る。

「きゃあ」

屋台の女の子たちは、叫びながらも、パンダの着ぐるみが素早く

2人を台の下に引きずり込む。

「いたぁい~」

メイド服の女の子が、悲鳴を上げる。

「いいから、じっとして!」

髪の長い法被姿のお姉さんが、台のすき間から、何事かと

のぞき込む。

「みんな、大丈夫?」

サキアと子供たちに、声をかけた…

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