第197話 野生児ジュンペイ、ここにあり!

「おーい、裕太ぁ!早く来いよぉ~」

 ヒャッヒャッヒャッとはしゃぐジュンペイの声が聞こえる。

「あいつ!いつの間に!」

声がする方を見上げると、いつの間にかかなり上の方にまで、

登っている。

その姿は、まさに…サルだ!

何の苦もなく、すいすいと上がっているのを見て、

(あいつ…前世は、サルだったんじゃないのか?)

呆れる裕太だ。


「裕太ぁ~早く来いよぉ~

 なんか、すごいゾォ~」

 ツルの先端の葉っぱの上に立つと、ジュンペイは手放しで、

下を見下ろして、はしゃいでいる。

「おい!危ないってば!

 落っこちたら、どうする!」

思わず巨木のようなツルに、ギュッとしがみついて叫ぶ。

自分だったら、目がくらんで、腰を抜かすのではないか?

そう思うのに…

サーカスの少年か?

それとも、雑技団にでも入るつもりなのか?

ヒヤヒヤする裕太だ。

「なんだよぉ~臆病だなぁ!

 大丈夫だよぉ」

ホレホレホレ!

つかまっているツルを、ブンブン揺らすと、グラグラと大きく

揺れる。

「おい!」

ジュンペイはわざと、葉っぱの先端に、トトトと駆けて行くと、

パッと手を離す。

「や、め、ろぉ!」

ひゃあ~

裕太は、目を回しそうになった。

 なんだよ、この怖いもの知らず!

 危なくて、見ていられないだろ?

 なんだよ、ずるいなぁ~

裕太はうらめしく思う。

もしかして、ショーンもファルコンも、こんな心配をしたくな

かったのか?

そんなことまで、深読みをする。

まさか、豆の木に住む巨人と出くわすのでは…と思っていたが、

どうもそれはなさそうだ…


「なんだぁ~巨人って、ここでは出て来ないの?」

 ホッとしていると…

「先回りして見てきたけど、巨人はどうも、いないようだよ」

いきなり声が聞こえた。

「え~」

のぼらない、と言い張っていたショーンだが、やはり気になっ

たのだろう。

裕太たちのすぐ近くを、並走するように、その側を飛んでいる。

「ショーン!」

「なんだ、ついて来たの?」

「いないって、どういうこと?」

さっき言った意味が、わからない。

自分たちが、ジャックならば、巨人は自分の家にいるか、

追いかけてくるはずだけど?

「うん、まぁ、そうなんだけど…

 どうやら、先客が来たようだ」

ショーンは、どうも歯切れの悪い言い方をした。

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