第186話 行き先だけの片道切符

 目を手でおおい、その場で固まっていると…しばらくして、

「開いたぞ」

ショーンに声をかけられた。

気が付けば、裕太はいつの間にかその場にしゃがみ込み、頭を

かかえるようにして、耳をふさぎ、目もぐっと閉じていたのだ。


「えっ?」

 おそるおそる目を開けると、扉が…ない?

いや、ないんじゃない。

自分達が扉の内側に、入っているのだ。

「えっ?どうなっているんだ?」

ジュンペイの声が聞こえる。

声をかけようとする間もなく、すぐにドーン!という何かが崩れる

音がして…

それと共に、再び周りがブラックアウトした。


「これって…中に閉じ込められたんじゃないか?」

ジュンペイの鋭い声がする。

「えっ、嘘だろ?」

裕太が振り返りざま、異変に気付く。

そこにあったはずの、扉が影も形もなくなっている。

 消えた?

「えぇっ?」

裕太は自分に目をこする。

「つまりは…帰り道はなしの、片道切符…ということだ」

淡々とショーンが、裕太に告げた。

(そんなことって、あるのか?)

その場に固まる裕太に反して、はしゃぐような声で

「うわっ!ついに…あの伝説のトオに挑むんだな!」

やったぁ~

ジュンペイは万歳をする。

(おまえ…怖くはないのか?)

裕太がそう思うけれども…

「しぃ~っ、静かに!」

すかさず裕太は、口に指をあてた。


 もう中だ!

 引き返すことも、もう出来ない…

 何があるか、わからないぞ!

「静かにしてくれ」

キュッと顔を引きしめて言う。

ジュンペイはヘラヘラとした表情を浮かべると、

「そうだな、キャプテン!

 かしこまりました!」

ふざけた調子で、ビシッと敬礼をする。

「おまえなぁ~」

思わずにらみつけるけれども、ショーンがこちらを向いている。

コクンと彼に向かってうなづくと、

「固まって行こう!

 とりあえず、上の方へ行くんだ」

そう言うと…いきなりボゥッとカンテラのようなものに、

光りが灯された。

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