第357話 彼女はとても気分屋で…

 何で、そんなことを言うのだろう?

サキアさんは、少しもあわてている様子がない。

「もしも、ショーンが手に入らなかったら…

 シェーラは、何をしでかすか、保障しないわよ。

 何しろあの子…元々猟犬だったんだから」

もはやキッパリと、彼女のことを犬と言い切る。

(それにしても…)と裕太は思う。

(見た目は、きれいな女の人なのに…)

見た目とのギャップがすごすぎて、何だか妙な感じだ。


「じゃあ…サキアさんが、命令をしたら?」

 我ながら名案だ、と裕太が自信満々でそう言うと、

「命令?まさか、お手!とでも言えばいいのか?」

サキアさんが、おかしそうに笑う。

「それに、アイツが素直に、言う事を聞くと思うか?」

澄ました顔で、サキアさんが言うので…

それはそうだ、と裕太は思わず、その様を想像してみた。

 確かに気位が高くて、気分屋で、ワガママな犬なんて…

そんな犬をかわいがる人は、サキアさんくらいなものだ。

(まさか、飼い主に似たの?)

そう思う裕太だ。

「アイツが勝手に、出て行ったんだ。

 探したのに…ドクターに改造してもらうなんて!」

何でそこまで、したのだろう?

(サキアさんが、したんじゃなかったんだ…)

思わずホッとする。


「改造?」

確かに、最初から人間の形をしているわけがないか…

ドクターバードのことを知っている、裕太としては、やりそうだなぁ

と納得する。

「なんで、そんなことをしたんだろう?」

思わずつぶやくと、

「さぁね。そそのかされたんだろう?」

その辺りは、彼女は興味がなさそうだ。

 だが…裕太にはわかる。

おそらくは、シェーラさんは、サキアさんになりたかったのではないだろうか?

(黙っていたら、きれいなお姉さんなんだけどな)

思わずそう思うと、

「悪かったな!おっかなくて」

どうも、調子が狂う。

「でも…まずいかも」

何となく、イヤな予感がする。

あのドクター…底知れない闇を秘めているようで、何をしでかすか、わからない。」

(狂気じみているしな)

またも、そう思うと

「だろ?」

サキアさんが、また合いの手を入れる。

「ちょっとぉ!

 さっきから簡単に、人の心を読まないでください!」

強い口調で、文句を言う。

そんなことは、お構いなしに、グィッと裕太に顔を近づけると、

「早くしないと、手遅れになる!」

怒鳴るように、そう言った。


 

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