第430話 早く!

 そんなことを、している場合ではない。

天井から、いきなりトグロを巻いた竜が、こちらに向かって

突進してくるのが見える。

「あっ、ファルコン?」

あわてて七色に輝く卵を持ち上げると、

「あっ!思ったよりも、重い!」

ジュンペイが、甲高い声を上げた。

反対側で、ショーンが扉を開けようと、頑張っている。

「裕太、例の鍵を!」

ショーンが叫ぶ。

「例の鍵?」

それって、何のこと?

裕太はポカンとした。


「そうはさせるか!」

 ドクロが叫ぶと、白い閃光が火花を散らして、ショーンに向かって

放たれる。

だが、そうはさせじ、と天井にいる竜が、火を噴いた。

「早く!」

ショーンが催促するように、裕太に叫ぶけれど、裕太はまだ

「えぇ~?」

何のことだか、わかっていないのだ。

「あっ、あれじゃない?」

 だがすぐに、ジュンペイが何かを思い付いたようだ。

「ほら、ここに来る前に、使ってたヤツだよ」

えっ?

一瞬、裕太は頭が真っ白になって、ジュンペイが何を言っているのか、

わからなかったけれど…

「あっ」

ジュンペイの顏を見ているうちに、思いだした。

そういえば、何にでも使えるという、万能の鍵があったはず。

「うん」とうなづくと、

「ほら、早く!」

ジュンペイにうながされるまま、裕太はあわてて、ポケットを探った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る