第36話 部屋を間違えていますよ?

 ルームサービスが来るのを待つ間…

これからどうしよう…と裕太は考えていた。

このまま、この世界から出られないのだろうか?

もしも2度と出られなくなったら、どうしよう?

そんな思いが、急に膨らんでくる。

 裕太の想いとは裏腹に、ジュンペイはのん気にブドウを

たべている。

「あのオバサン、すごいなぁ~

 どんだけ、金持ちなんだよぉ~」

大きな声で言う。

「さぁねぇ」

裕太は、そんなのんきなジュンペイが。羨ましかった。


 トントン…

部屋のドアがノックされた。

そういえばミスターは、勝手に人を部屋に入れてはいけない、

と言っていたっけ…

ふいに裕太は、思い出した。

「おっ、ルームサービスかぁ。

 ずいぶん早いなぁ」

 はしゃいだ声を上げると、止める間もなく、ジュンペイが

すでにドアに取り付いた。

「あっ、ちょっと待って!

 開ける前に、確かめないと!」

あわてて裕太が叫んだ。

「はぁい」

だが裕太の声を無視して、ジュンペイがドアを開ける…

「あぁあ」

 せめて、確認してからにしろよぉ。

そう思っていたら、ドアの向こうで、複数の人の気配が

していた。

「マズイ!ジュンペイ、閉めろ!」

叫んだけれど、一足遅く、ガツッと黒い手袋がドアの端を

つかんでいる。


「やぁ、こんばんは」

 低くくぐもった声が、すき間から聞こえてきた。

「だれ?」

ドアの前で、ジュンペイが立ちすくんでいる。

もちろん、ルームサービスではない。

カラスみたいに真っ黒な服を着て、サングラスをかけた男たちが、

いきなりドアのすき間から、靴の先を突っ込んで、ぐいっと

押し広げると、ジュンペイを押しのけて、ドヤドヤと入って来た。

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