第313話 ありがとう、マーサ!

《今だ!》

 マーサの足元をすり抜けると、子供たちはダッシュで、勝手口

まで走って行く。

ドアのすき間から飛び出すと、すぐ出た石段の所に、包みがチョコンと

置かれていた。

「あっ、もしかして」

裕太が包みを手に取ると、まだホカホカのぬくもりを感じる。

「マーサだ!約束通り、作ってくれたんだ」

裕太はその包みを、ギュッと抱き締める。

「あっ、ボクの分もある!」

嬉しそうに、ジャックが声を上げた。

その包みは、裕太たちには結構な大きさだったが、巨人のマーサには、

小さかったことだろう。

チラリ…と奥を見ると、マーサがまるで、3人を隠すようにして、

勝手口の前に立ちはだかり、こちらに背中を向けている。

後ろ手に、シッシッと手を振って、さり気なくあちらの方を、指し示す。

『ありがとう』

 口元だけ動かして、裕太は彼女に向かって、頭を下げる。

紙袋に入った包みを1つ、手に取ると、リュックサックに詰め込んだ。

ジュンペイもジャックも、裕太にならって、手に取っている。

「さぁ、行くぞ」

小声でささやくと、ダッシュでポーチから飛び出した。

 果たして、大丈夫なのだろうか?

何も考えず、外に出て来たけれど。

鶏小屋があったのとは、別の出口だ。

裕太の記憶によれば…確か犬小屋があったはずだ。


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