第207話 潜入!

 その獰猛な犬の顔つきを見ると…

石のように、固まってしまう裕太だ。

「いいか?逃げるぞ」

絶対に犬と目を合わせるな!

ジュンペイが叫ぶと

「行くぞ!」

ダッシュで、ドアに取り付くと、強引に開けようと

引っ張った。

 この犬…番犬としては、かなり優秀な部類だろう。

歯をむき出しにして、敵意を丸出しにする。

うなりながら、徐々に間を狭めてきて…少しでも

油断したら、いつ飛び掛かってくるか、わからない…

 もうダメだぁ~

 せめて、ショーンかファルコンでもいたら…

ガシャガシャと、ドアの取っ手を揺らすジュンペイに

向かって、

「ダメだよ!

 ゼッタイ、カギがかかっているよぉ」

動揺のあまり、サキアさんからもらった、万能のカギ…

どんなカギでも開けることが出来る…の存在のことを、

すっかり忘れていた。


 ギィ~

いきなりドアが、きしみながら音を立てて開く。

「ほらね!」

勝ち誇ったように、ジュンペイが言う。

「どちら様ですか?」

まだ中に入らないうちに、女性の声がした。

「えっ?」

ドアの側には、誰もいない。

声だけが、はっきりと聞こえる。

(まさか…この犬?)

入り口のすぐ側には、確かにさっきの犬が、座っている。

 しまった!

 これって、ワナ?

ビクンと裕太は、肩を揺らす。

「バカだなぁ~犬がしゃべるワケ、ないだろ?

 カメラで、見てるんだよ」

平然として、ジュンペイは堂々とした態度で、ドアの上を

見あげた。

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