第119話 帰りたい、帰れない?

 リーダーのアキラさんは、じぃっと考え込む仕草をすると、

「それは、必要なことか?」と聞く。

「はい」

ミナトがうなづくと、

「そうか」

彼は静かに、子供たちに目をやる。

「君たち…家には帰りたいか?」

じぃっと、子供たちの目を見つめる。

「えっ」

いきなり話を振られ、裕太は戸惑ってジュンペイを見ると

「もちろん!」

「そりゃあ、帰りたいよ」

口々にそう言う。

「そうかぁ~そうだよなぁ」

見返してくる4つの瞳に、彼はしばし考え込んでいる。

「わかった」

そう言うと、ふいに自分の背後を振り返る。

「悪いが…この子たちを、お連れして」

「えっ」

彼はまっすぐに、ミナトを見る。

「いいんですか?」

思わずミナトが聞き返すと、アキラさんは子供たちを振り返り

「だって…こんな目で見られたら…仕方がないだろ」

苦笑いを浮かべる。

「この子たちが…あの子供たちのように、取り残されるのは、

 かわいそうだろ」

離れた所で、裕太たちを珍しそうに見つめる、村の子供たちの

方を指し示した。


「はい!」

 気持ちがよいくらいの、力強い声を出して、ミナトがうなづくと、

裕太たちの方を微笑んで見る。

「よかったなぁ!

 これから《あのお方》の所へ、連れて行くぞ」

《あのお方》って、誰のことかわからないけれど、

ジュンペイは「やったぁ~」と万歳をする。

「よかったわねぇ」

ニコニコとマリさんは見守る。

「でも…ここから行くところは、今までとはまったく違うからね!

 ちゃんと礼儀正しく、静かにしてね」

真面目な顔をして、

「ミナトの言うことを、聞いてよ」と、裕太とジュンペイを

順繰りに見つめた。

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