サキアの休日…48

「サキア様」

 ボンヤリと物思いにふけるサキアの背後で、遠慮がちにミスターが

声をかける。

「あら、どうしたの?」

普段は礼儀正しく控えているミスターが、どうしたのかと思う。

「あ、あの、パーティーをするんですよね?」

 このボディーガードは、もしかして、自分が勘違いをしたのか、と

気にしているようだ。

「あっ?あぁ~そうだったわね」

そういえば…あの子供たちを送り返したら打ち上げをしよう、という

話をしていた、と思い出す。

「ごめん、すっかり忘れていたわ」


 だが、それも、鋼鉄の女と言われた、サキアらしくない。

どうも今ひとつ、迫力に欠けるのだ。

 彼はそーっと、その場を離れるようにして、足音をたてないように

気を付けて、背を向ける。

「ねぇ、ミスター」

けれども、ボンヤリとしたままのサキアに、呼び止められる。

「はっ、はい」

 今度はなんだ?

 まさか、中止にしよう、と言い出すのか?

そう思って振り返ると、彼の顔を見て、サキアは珍しくフフッと笑う。

「私ねぇ~また、結婚し損ねたわ」

その割には、とても楽しそうに言う。

「えっ」

 この場合は、励ましたらいいのか、それとも聞こえないふりをすれば

いいのか?

正解は、どっちなんだ?

返しに戸惑うミスターは、とにかく何かを言わねば、と思う。

「まさか…するつもりが、あったんですか?」

何気なく、爆弾を投下する。

「はっ?」

すぐに、いつものように、サキアが鋭い声を出す。

(あっ、しまった!)

ミスターは、完全に読み違えたことに、気が付いた。


「ちょっとぉ~それって、もしかして、イヤミ?」

真顔で、サキアは言い返す。

だが、彼は何を思ったのか、

「ボク…サキアさんの、そういうところ…好きです」

さらに、傷口に塩を擦り付ける真似をした。

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