サキアの休日…47

「あなたさえよかったら…

 いつでも一緒に、暮らしてもいいわよ」

 耳元に、マリさんの穏やかな声が響いている。

この言葉を…かつてはどれほど、待ち焦がれていたことだろう!

サキアは静かに、次の言葉を待つ。

「私ね、正直言うと…あなたとミナトが、駆け落ちすると

 思っていたのよ」

おかしいでしょ、とクスクス笑いながら、マリさんはサキアに

向かって、そう言う。

「あら、そうなの?」

ガバッと顔を上げると、思わずマリさんの顔を見る。

「なによ、それ!」

それから思いきり身体をのけぞらせると、今度こそ大きな声で笑う。

「ミナトと?

 そんなの、あり得ないわ。

 だって、ミナトは…ただの幼なじみなんだもの」

 ケラケラと豪快に笑う。

「あら、ホントにそうかしら?」

 だがマリさんの目は、引き下がるどころか、ヒタとサキアの目を

捕らえ、疑うようにじぃっと凝視する。

その目は…些細なことも見逃すまい、と決めたような鋭い目付きだ。

思わずサキアは、顔をそらした。


「あぁ~本当に、気持ちのいい天気!」

 サキアは思いっ切り、伸びをする。

だがマリさんはまだ、サキアのことを見つめると、

「ねぇ~あなた、帰りたいとは思わないの?」

無理をしてない?

節くれだった手を、サキアに向かって伸ばす。

「いつでも、帰って来ていいのよ。

 何しろあなたは、私の本当の娘みたいなものだから」

「ありがとう」

心配そうに、手を差し伸べるマリさんの手を触れる。

「まだ、大丈夫よ」

そう言うと、とびっきりの笑顔を見せる。

「だって、私には…まだ、することがあるもの」

そう言いかけて、思わず言葉を飲み込む。

(私の両親を殺した、あのトオに復讐するまでは…)

心の中で、そうつぶやく。

「ねぇ、あなた…それで寂しくはないの?」

マリさんは、ポンとサキアの肩に手を置く。

「寂しくなんかは、ないわ」

強がりのように、そう言うと

「あらっ、ミナト!」

マリさんの心配そうな目を振り切るように、振り返ると、

声を上げた。

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