第301話 やっぱり、ドロボー?

「いや!だけど…何だか納得出来ないなぁ」

 やはり、ブスリとするジュンペイだ。

何だか…自分たちはうまく、このジャックというペテン師に、

丸めこまれたのではないか?

(ボクたちに、探させて…美味しいところだけ、奪うんじゃないのか?)

気づいてしまったようだ。

「でも、あのハープ、五月蠅いんだよなぁ」

くやしまぎれに、そう言うけれど…

内心ホッとしてもいた。

「なっ!」

裕太の方を向く。

「うん、アラームがセットされているんだよなぁ」

裕太も素直にうなづくと、

「知ってるよ」

まったく平気な顔で、ジャックは言う。


何だよ、それ!

ちぇっ!

ジュンペイは、再びムッとした顔になる。

「だって、ボク…1度盗んだことがあるんだもん」

シレッとした顔で言う。

「えっ?」

「うそっ!」

ヤバイ!一枚上手だった…

裕太は唖然とする。

「どうして?」

「どういうこと?」

ブスッとしたジュンペイと、キョトンとした顔の裕太が、

食い入るようにジャックを見返す。

「何だよ、その顔!」

笑えるぅ~

あはは!

ジャックは、思いっ切り笑い飛ばす。

「君たちって、ホントに、似た者同士なんだね」

無邪気な顔で笑った。


「さぁ、とにかく、ここを出よう」

 気が済んだ…とばかりに、さっぱりとした顔で、ジャックが言う。

「えっ」

まだ、ジャックという人間のことが、わからない裕太は、

ポカンとしている。

「あれ?それとも、捕まりたいの?」

ヘラッと笑うジャックの瞳が、暗緑色の底光りを帯びる。

(なんだ、コイツ…)

やはり裕太には、ジャックが何者か、わからなくなってきた…

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