第53話 危険なご対面!
ダメだ…
何か、キッカケがいる…
裕太は1人焦っていた。
カツカツカツカツカツ…
足音が、やけに響いて聞こえる。
「着いたぞ」
若い男の声だ。
それからヒョイっと、袋ごと持ち上げられる。
まるでデッカイ絨毯を背負うようなスタイルで、軽々と裕太は
運ばれた。
(どこへ行くんだ?)
さすがにこの状況では、手も足も出ない。
いよいよ手詰まりだ。
そう焦りを感じていると、ついにドサッと床に、投げ出された。
「イテテテテテ…」
もう少し、丁寧に下ろしてよぉ~
モゴモゴと、袋の中で身体を動かす。
「静かに待ってろ!」
押し殺した声をかけられる。
裕太としては、今、どういう状況かわからないので、おとなしく
す巻きにされたまま、じっと耐えていた。
カツンカツンカツン…
誰かがまた、こちらの方へ、近付いて来るようだ。
裕太はひそかに、逃げ出す算段を考えている。
タイミングを見計らって…とにかくこの袋から、出してもらう
方法について…
「やぁ、ようやく着いたのか?」
独特の声の主が、傍らにしゃがみ込む気配がした。
(なんだ?)
ザワリと嫌な感覚が、背中を走り…
裕太はさらに、身体を固くさせる。
「おい。いい加減に、出してやれ」
やけにかすれた声で、その男は言う。
「は、はい!」
ピリピリとした空気が流れ、妙に引きつった声が、複数聞こえてきた。
そうしてまもなく、目の前が明るくなった。
逃げよう…と思ったが、先ほどまで閉じ込められていたせいか…
眩しさに目がくらむ。
思わず目に手をやると、目をシパシパさせる。
「やぁ~キミが、例の子供か?」
妙にガラガラ声で、白衣の男が話しかけてくる。
目が慣れるまで、裕太はボーッとしていたが、そこがやけに
明るいことに気付く。
白一色のまぶしいくらいの、明るい部屋だ。
床も白、壁も白、電灯もまぶしいくらい…
ペタンと床に手をついて、裕太はその場にしゃがみ込むと、
「あの…ここは、どこですか?」
おそるおそる、その男を見上げた。
白髪といっていいくらいの、見事なまでのシルバーヘアが、
白衣に異様に似合っている。
背はその年ごろの人にしては、高い方で、カカシのように、
足が長い。
ただ顔だけが…妙にゴツゴツとしていて、洞窟を思わせるような、
暗いまなざし…
しかし異様に、目力が強く、その目でひとにらみされたら、
息が止まってしまうのではないか、と思う。
止まらないにしても、歯向かうことなど、不可能なのではないか…
というくらい、鋭いまなざしだった。
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