第164話 新たなる冒険の始まり

 裕太は、何だかドキドキしている。

ショーンにつかまる手のひらが、汗ばんでぬるぬるしている。

落ちないようにと、グッと指先に力を込めて、ショーンの

衣につかまる。

 バサッバサッバサッ…

 大きく翼を動かすと、ショーンは一気に、穴の向こうへと

躍り出る。

「くれぐれも、気を付けて!」

「絶対に、油断するなよぉ」

「必ず、無事に元の世界に帰るのよ~」

ミナトたちは、穴の縁に鈴なりとなり、裕太とジュンペイに

エールを送る。

「ありがとう!」

ショーンの身体に手を回し、しっかりとしがみつくと、裕太は

みんなに向かって、声を張り上げた。

ジュンペイも、振り落とされないようにと、ファルコンの身体に

手を回すと、ベッタリと身体を押し付けた。


 フワリ…

ついに、洞窟を離れる。

久しぶりの外だ!

思ったよりも、大きな地下都市だったなぁ~

後ろを振り向いて、裕太はそう思う。

こうやって見ると、洞窟が大きな岩肌に、幾つもポコポコと無数に

あいていて、自分達がいたのは、そのうちの1つだった、と

気が付く。

これを、ミナトたちが守っているのか…

あらためて、気付いたのだった。

 キラリ…

トオの上部で、何かが光る。

(何だろう?)

風を感じて、目を細める。

その正体が何か、見極めようと、裕太はまなじりに力をこめる。

さらにトオを見上げると…

頂上が見えないくらいに、

雲に頂がつきそうなくらいに、高くそびえている。

本当に、大丈夫だろうか?

今さらながら、裕太は不安になってきた。

そうしてもう目の前には、トオへの非常用の連絡口の1つが、

ポッカリと口を開けている。

さらにちらりと、大きなツルのようなものが、上から垂れているのが、

裕太の目に入った。

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