第315話 一難去ってまた一難?

 凄まじい勢いで、裕太ぐらいの大きさの犬が数頭、こちらに

向かって突進している。

「ヤバイ!」

あわてて逃げ出そうとすると…

「大丈夫だ!」

なぜか悠然と落ち着き払った顔で、ジャックがそれを止める。

「ちょっと、貸して!」

返事を待たずに、ジャックは裕太のリュックに、手を伸ばす。

「なに?」

今は、そんなことをしている余裕はない。

「だから、犬笛!」

ジャックが怒鳴ると、勝手に背後に回り込み、リュックの蓋をあけて、

手を突っ込む。

「ちょっと、おい!」

何を、勝手なことをするんだよぉ~

裕太がムッとするのもかまわずに、ジャックはサッと目的の笛を口に

くわえると、思い切り息を吸い込んだ。


ピィ~ッ!

(そんなので、本当に効くのか?)

半信半疑な裕太だ。

だがすぐに、犬は吠えるのをやめ、シッポをダラリと垂らし、スゴスゴと

引き下がって行く。

「えっ?すごい!」

下手すると、自分たちよりも、かなりデカイ犬が、こんな笛1つで

大人しくなるとは!

「これ…誰にもらったんだっけ?」

裕太は、ジュンペイの顔を見る。


「おい!そこに、誰かいるのか?」

勝手口から、巨人の声がする。

「しつこいなぁ~」

ジュンペイは、口をとがらせる。

巨人の耳は、思いのほかいいようだ。

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