第110話 住めば都

 落ち着きのないジュンペイは、マリさんの手伝いを

しているのか、はたまた邪魔をしているのか、

わからない状況だったけれど…

マリさんは決して、邪険にしたりはしなかった。


「え~っ、すごい!

 鶏も飼っているの?」

卵も取りに行く、というマリさんの後を、ヒョコヒョコと

ついて行く。

「何をそんなに、驚いているの?」

マリさんの家を出てから、別の通路を抜けたところに、金網で

出来た小屋があるのを見付ける。

「こんなの…大したこと、ないわよ」

「え~っ、でも朝日を浴びないと、鳴かないんじゃないの?」

ジュンペイのイメージでは、早朝からやたらとにぎやかしく、

コッコッコッコッ騒いでいる姿だ。

「何を言っているのよぉ」

笑いながら、マリさんはその小屋に頭を突っ込む。


 まだ生みたての、ほの暖かい卵をカゴの中に入れていく。

「鶏だけじゃないのよ。

 牛乳だって、取れるのよ!」

「え~っ、牛もいるの?」

 案外この2人…ウマが合うようだ。

先ほどから、大げさに驚くジュンペイの顔を、彼女は楽しそうに

見ている。

「地下だってね、やろうと思えば…案外色んな事が出来るのよ!」

とても嬉しそうに、ジュンペイを見る。

「へぇ~そうなんだぁ」

ジュンペイが感心しているのを、満足そうに見つめた。

「あなたって、本当はとてもいい子なのね」

ニコニコしながら、マリさんが言うと

「えっ、何を言っているの?

 そんなこと、ないよぉ」

照れくさそうに、頭をかきむしる。

だがなおも、マリさんが見ているので、

「そんなの…あるわけがないだろ?」

ソッポを向いた。

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