第267話 あきらめない男

「なんだよ、それ!」

「なんだかすごく…おかしな理屈だよなぁ」

 ジャックとジュンペイのやり取りを聞いて、思わずクスリと

裕太が笑う。

ジュンペイもだけど、ジャックもたいがい、くせ者だなぁ~

そんなことを、あれこれと考えている。

「まあ、今さら…誰の物だとか、もめるのって、何だか違う

 気がするんだけど?」

 それに、巨人の物だろ?

珍しく裕太が、真剣な顔になる。

ジュンペイには、誤魔化しなど通用しない…と悟ったのか、

ジャックは上目遣いで、彼を見る。

「だってさぁ~母さんが、金を持って帰らないと、家に入れて

 くれないからさぁ~」

 つい、ほんの出来心だったんだ…

ペロリと舌で、唇をなめた。


 ハン!

だがジュンペイは、鼻で笑う。

「そんなことで、金をもらっていたら…

 みんな、ドロボーしてもいいってことになるだろ?」

険しい顔つきで、ジャックに言う。

お涙頂戴ものは、嫌いなんだ…

どうも端から、ジャックのことが気に入らないようだ。

「ま、そういうわけだから!」

 だがジャックには、そんな言葉も響かなかったようだ。

ひょいっと袋をかつぐと…

いきなり不意をつくようにして、走り出した。

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