第167話 この世界の迷子たち

 サキアさんの言葉に、耳を疑う。

「えっ、それなら、なに?」

ボクたちは、何者なんだ?

ジュンペイもピョコンと、顏をのぞかせる。

「あら、わかってるでしょ?」

彼女は澄ました顔をする。

「あなたたちは…この世界に連れて来られた、迷子なんでしょ?」

「あっ!」

そう言われれば、そうかぁ。

ずいぶんと面倒な迷子だ。

裕太は思わず、ジュンペイと顔を見合わせた。


「じゃあ、ボクたち…受け付けせずに、このまま入ってもいいの?」

 おそるおそる裕太が、サキアさんをうかがう。

「そうねぇ~」

彼女は少し考え込むと、

「あなたたち…本当は迷子なんだから、迷子センターに行くのが

 筋なんだけどね!」

そう言うと、ミスターの方を見る。

迷子センター?

やだやだ、それは絶対にいやだ!

「でも、ボクたち、小学生だし…

 小さな子供でもないしぃ~」

渋るように、ジュンペイが言う。

「大丈夫、だよな?」

不安そうにする裕太とジュンペイに、

「あら、そういうわけには、いかないわ!」

ここは、キッチリとしないとね。

突然ビシッと、サキアさんが言いきった。

「それに丁度よく、保護者の代わりもいるしねぇ」

彼女はニヤリと笑うと、ショーンとファルコンを見る。

「えっ?」

そうなのか?

「それって、人間でなくてもいいの?」

なんだか、おかしなことになってきた。

それって…大げさに言うと、自分以外なら、犬でも猫でも

いいっていうことなのか?

(えっ?それって、ボクたち…動物以下?)

「それって、おかしくないか?」

思わずジュンペイが、素っ頓狂な声を上げた。


「おい、失礼だぞ!

 少なくとも、ショーンは人間だ」

 裕太がジュンペイを突っつく。

とにかく、あやまれ…と。

「でも、羽がはえていても?」

「そうだ!」

振り払うジュンペイに、さらに裕太は突っつく。

「まぁ、そこはそれ!

 考え方次第よね?」

サキアさんはそう言うと、帽子からスタンプを取り出した。

(えっ、なんだ、それ!

 ドラえもんのポケットか?)

ギョッとして、裕太が思わず、帽子の中をのぞき込もう

とする。

「レディーの持ち物を、そんな風に見るもんじゃあないわ」

やんわりとそう言うと、パサっと裏返す。

「大切なものは、いつもこの中よ!」

そう言うと、軽く帽子を振ってみせる。

だけど見た感じは、何の変哲もない、ただの黒い、つばの広い

帽子だ…


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