第412話 不思議な声

 裕太の手には、先ほど目玉のオヤジが放った矢が、握られ

ている。

近くに落ちたのを、すかさず拾ったのだ。

そうして、耳を澄ませる。

相手がどこにいるのか、耳に頼ろうと思ったのだ。

すると…かすかに、音が聞こえる。

視覚を閉ざし、さらに耳と鼻に頼ってみる。

《ヤツは…一時の方向にいる》

ファルコンの言葉に従い、意識を集中させる。

カサリ…

何かを踏む音がする。

何ともいえないような、生臭い息をわずかに感じた。

「そこだ!」

カッと目を開けると…裕太は手に持っている矢を、思いっきり

真っ直ぐに投げる。

「なんだ?」

いきなりの裕太の動きに、ジュンペイは意表をつかれる。

だがすぐに、その矢を目で追う。

一瞬、ヒュンと飛び去る相手の衣の端が、ジュンペイの目にも

わずかに映った。

ヒュン!

同時に、ジュンペイもその方向に向けて、石を飛ばす。

両方向からの攻撃に…さすがの敵も、逃げ道を見失ったようだ。

パッと、目の前に姿を現す。

「子供だと思って、手を抜いてやったのに…

 とんでもないガキだな!」

憎々し気に、そう叫ぶと、ビュッと緑色の体液が、裕太たちの方

にまで飛び散った。

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