サキアの休日…20

「えっ?まさか…あのときの男の子?」

 思わずサキアが、小さく声をもらすと、ミナトはニコッと笑う。

「なんだ。覚えているじゃないか」

そう言う彼を、あらためてじぃっと見つめ

「ううん!言われるまで、すっかり忘れてた」

恥ずかしそうに、下を向く。

情けないけれど…今の今まで、抜け落ちていた記憶だ。

どうして?

他の記憶は、ちゃんとあるのに…

そう思うけれど、あの時はサキア自身も、一杯一杯だったのだ。


「あれは…私たちにとっても、あまりにも突然で、悲惨な出来事

 だったのよ」

 狂った科学者たちによる、大量虐殺。

あの時の犠牲者は…地下の住人の半分ほどに上った。

だから、その時見た男の子のことは、マリさんも目に入って

いなかったのだ。

「あなた…あの時、一人だったの?」

ミナトはあの時、サキアと同じくらいか、もう少し小さかったはずだ。

あんな場所…幼い男の子が一人で、来るような場所ではない…

そう思ったのだ。

「うん、まぁ…そうだな。

 ボクの両親も、あの時巻き込まれたから…遠縁のおばさんが、

 一緒にいたはずだよ」

静かにそう言った。

「そう…」

 再び、二人は黙り込み、サキアはマリさんを見ると

「ねぇ、覚えてる?」

空気を変えよう…

あわてて、口を開いた。

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