第439話 これは?

 鳥かごの中は、静寂に包まれて…

外の様子は見えるけれど、その状況は、すさまじいものだった。

まるで、レンズ越しに見ている世界のように…

パラパラと天井が、崩れ落ちているのが見える。

「ここも…いつまでも、安全というわけにはいかない」

ショーンが、裕太とジュンペイの背中を押すようにすると、不思議な

色をした床に、何か奇妙なものを見付けた。


「なんだ、これは?」

大きなマークのようなものが、鳥かご一杯に描かれている。

タイルか?

それとも…石なのか?

「これは…なに?」

しかも不思議な形をしている。

鳥のような?

ヘビのような?

いや、あれは…

何かをかたどっているようにも見える。

「三つの頭の竜だ」

ショーンは、裕太の肩越しにのぞき込むと、そう言う。

そのモニュメントのようなものには、三つの目玉が描かれている。

緑色の瞳

紫の瞳

そうして…

「あれ?

 目玉が一つ、足りない…」

竜の横顔に、ポッカリと穴が穿たれている。

「もしかして…これが、そう?」

裕太がつぶやくと、

「貸して」

ジュンペイの方を向く。

 だがジュンペイは、静かに頭を振ると…黙ったまま、自分の手に

持っているその卵を、ゆっくりと穴に近づけていく。

七色の光を放つその玉は…

カチリという音を立てて、その穴にすっぽりとはまった。


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