第406話 なんだ、それは?

「どうした?」

 突然しゃがみ込むジュンペイを見て、裕太は声をかける。

「なんだ、これ?」

またもジュンペイの素っ頓狂な声が、響いている。

「サキアの…書?」

 何なんだ?

 その、古ぼけた本は?

茶色のガッチリとした表紙の本は、タイトルも作者名も、出版社の

名前も、一切合切何ひとつ、書かれてはいない。

ただのゴツいノートにしか、見えない。

ジュンペイが持っているすき間から、様々な記号なのか、文字が

ヒラヒラと動き回っているのが、チラリと見える。

どういうことだ?

文字が動く?

まるで、文字が息をして、動き回っているように見える…?

「えっ?」ハリー・ポッターに出て来るような、魔法の書なのか?

呪文を唱えたら、モンスターが出て来るのか?

それとも、地図が出て来るのか?

裕太は固まっている。


 さすがに、酒を一滴も飲んではいないのに(飲めないのに)

まるで酔っ払っているように、幻覚が見えている?

(もしかして…ボクは、頭がどうにかなったのかなぁ?)

そんなことを思いながらも、そのノートをのぞき込んでいる。

(一体、何が書かれているんだろう?

 サキアの書ということは…サキアさんの?)

「サキアさんに、返さなくちゃ!」

そう裕太がつぶやく。

だがその前に、ジュンペイがゆっくりと、そのノートを開いた…

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