第137話 とっておきの場所はどこだ?

「見せたいものがあるの」

 キヨラさんは今度は、逆方向に向かって歩き出す。

「えっ?」

てっきりトオのある方向へ向かう…

そう思っていたので、

「あれっ?」と思う。

「そっちは、トオの方じゃないよぉ」

そう言うけれど

「大丈夫!わかっているから」

キヨラさんは、そのまま歩を進める。

彼女にとって、この洞窟は庭(それとも家?)のようなもの

なので、多少暗くても、迷いがないようだ。

(まるで、見えているみたい)

「見えないわよ」

裕太の心の中も、お見通しのようだ。


 だけど自分たちの方が、迷子になりそうなので、置いてきぼりに

ならないように…見失わないように、裕太はその後ろを追いかける。

それにしても、スズカさんは、何も思わないのか?

黙って従っているので、気になってくる。

(もしかして…聞かないように、しているの?)

その時はじめて、裕太の中で、何かが芽生えていた。

好奇心なのか、使命感なのか、それとも…

 この世界に、理不尽に連れて来られた、恨みのようなものなのか…

うまく説明できないような感情が、裕太の中で湧きあがってきていた。

だけども、ただひたすらに歩いているうちに…

汗と共にすっかり抜け落ちたのか、余計なことは何も考えられなく

なっていた。

 一体、この地下はどうなっているのだろう?

やけに広い…というイメージなのだが…

もしかしたら、自分の知らない世界が、この周辺にはたくさん、

存在しているのだろうか?

そう思うと、少しだけ気持ちが明るくなってきた。

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