第320話 それなら、こうだ!

「貸して」

 引ったくるようにして、裕太はジュンペイから石を受け取る。

「何をするつもりだ?」

それには答えず、リュックサックからロープを取り出す。

光る石に、しっかりとロープをくくりつけると、

「まぁ、やるだけやってみるさ!」

そう言うと、おもむろに裕太は、ロープを手に巻き付けて、

ブンブンと振りまわす。

「ちょっと!危ないなぁ~」

あわててジュンペイが、身体をよけると、さらに腕を大きく回す。

その石は、太陽の光を受け取ると、キラキラと七色の光を放つ。

「ねぇ、これって、何の石?」

思わず聞くと、ジュンペイはキョトンとした顔で

「さぁ?その辺の石が、とってもきれいだから、拾ってきた」

ポンとそう言う。

いつの間に?

相変わらずジュンペイは、マイペースだ。

さして特別な意図があるとか、目的とか…

何も考えてはいないようだ。


 ブンブンと空中で振りまわすと、力を込めて、一気に幹に振り下ろす。

ガツッ!

確かに、それが突き刺さった。

「よっしゃ!」

確かな手ごたえを感じて、裕太はさらに振り上げようとすると…

「ねぇ、いいから、貸して!」

裕太が羨ましくなったのか、早速ジュンペイが食いついて来る。

どうやら楽しそうに見えたようだが、裕太の手付きが、危なっかしく

見えたらしい。

「そりゃあ、いいけど」

裕太があっさりと譲ると、ジュンペイはロープを握り締めて、

「こうやると、力がいらないよ」

そう言って、ブンと大きく手を振る。

 ガツン!

先ほどよりも、さらに大きな音を立てて、かなり深く突き刺さっている。

「おっ!」

これには裕太も思わず、声をもらした。


「適当な所まで、切れ目を入れたらいい」

 ジュンペイは、慣れた口調で言う。

 ジュンペイって、何者だ?

器用にそつなくこなす彼のことを、裕太はちょっとうらやましい。

その鮮やかな手つきに感心して、

「ねぇ、もしかして、薪割りでもしたことがあるの?」

思わずそう聞いていた。



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