第462話 まさかの奇跡?
「ケガはない?」
まだ座り込んでいる、ジュンペイに声をかける。
いくらジュンペイでも…あの高さから落ちたら、無傷という
わけにはいかないだろう。
だが、予想に反して、ジュンペイの声は相変わらずだ。
「うん、大丈夫!
すごくいいタイミングで、コイツが来てくれて…
とっさに、つかまったんだ」
そう言うと、赤い像のあった、あの洞窟を見上げる。
「普通、あそこから落ちたら…無事では済まないぞぉ」
大げさに声を張り上げて、裕太が叫ぶと
「ま、そうだよなぁ」
はっはっはっと、ジュンペイが笑う。
のん気に笑っている場合か、と思うけれども、裕太には
もう一つ気になることがある。
「ねぇ、ファルコンは?」
確かジュンペイは、あの像につかまっていたはずだ。
何度も見回すけれど、どこにも見当たらない。
(そういえば…ショーンは?)
ふいに思い出すと、洞窟を見上げる。
ものの見事に、壁面が崩れ、あの赤い像だけが、チラリと
見えている。
「帰ったんじゃあないのかなぁ」
ジュンペイは、つぶやくように言った。
「えっ?」
裕太がジュンペイに聞き返すと、ジュンペイは珍しく、
にこやかに微笑んでいる。
「なんだよ、気持ち悪いなぁ」
何か知っているのか、と裕太はそう思う。
「あのドローンが来た時…
一瞬、竜が飛んでいるのが見えたんだ…」
それって、ファルコンは石像にはなっていない、という
ことなのか?
だが、ジュンペイは多くを語らない。
あの神々の島に、目を向けている。
「そうなのかなぁ~」
結局自分たちは、どうやって帰って来たのか…あまりよく
わからないけれど…
だけどもこれで、家に帰れる…と思うと、やはり裕太は
ホッとする。
「でもさぁ~自転車、ちゃんとあるかなぁ?」
ジュンペイに向かって、にぃっと笑う。
「あるんじゃあないのか?
こんなトコ…誰も来たりするもんか」
ポケットに手を突っ込む。
カラン…
何かが、手に触れる。
「あれ?」
「どうした?」
この手触りは?
「これって、あの犬笛?」
もしかしたら、ショーンかファルコンに、届くのだろうか?
空に向かって、ジュンペイは思い切り、大きく息を吸い込んだ。
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