第309話 あわやみじん切りに?

 やるしかない!

勢いをつけて、まっすぐに飛び上がる。

真上を旋回するカッターをかわして、上へ飛ぶ。

ヒュン!

すぐ脇を、カッターが空を切る。

ジリジリと汗がにじむ。

タイミングを見計らって…手を伸ばす。

かろうじて、目の前の格子につかまる。

ふぅ~

しっかりと、棒にしがみつく。

ゴォ~ッ!!

勢いよく回っていたカッターは、目の前を通り過ぎて行った。


「やれば出来るじゃないかぁ~」

 気が付くと、ジュンペイとジャックが、網の端の所に立っていた。

「あっ、みんな!無事だったの?」

額に張り付いた前髪を払うと…ようやく裕太は顔を上げる。

「ほら、こっちへ」

ジャックが裕太に、手を差し伸べる。

「ありがとう」

ぬるぬるとする手のひらを、ズボンに擦り付けると、裕太はその手に

捕まった。


 どうにかジャックに引っ張ってもらって、土管のような所に

飛び移る。

間一髪で、あの凄まじいカッターの餌食にならずに、脱出に成功した。

「危なかったなぁ」

思わずつぶやく。

「ねぇ、あれって、何だったの?」

先ほどの光景が、まだ生々しく裕太の脳裏に、焼き付いている。

向こうの方で、ゴーッという音が聞こえる。

「あれに巻き込まれたら、一発だ!」

そんな言い方って、ないだろう、と思うけれど…

なぜかジュンペイは、得意そうに言う。

「あれはね、ダスターシュートだ。

 あれに引っかかったら、木っ端みじんに、バラバラにされてただろうな」

事も無げに、やけに冷静な顔をして、ジャックが言う。

「知ってたの?」

「もちろん」

えっ、なんだよぉ。

「それを聞いてたら、ここには来なかったのに…」

小さな声で、裕太がつぶやく。

「だからだよ!」

ジャックの代わりに、ジュンペイがトンと裕太の前に立つ。

「あれを知ってたら…お前は、行かなかっただろ?

 だからぁ~教えなかったんだ」

腰に手を添えて、やや強い口調で裕太に言う。

「だって…その方が早いしなぁ」

さっきのことなどなかったように、余裕の表情を浮かべて、ジャックが笑った。

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