第288話 あれは、なんだ?
「もしかして…お宝?」
やはりジュンペイが気になるのは、巨人のお宝かどうか、
ということだ。
「そうなんじゃない?」
確か、ジャックと豆の木の話にも、出て来たはずだ。
2人の目の前には、今も金色のハープが音を奏でている。
巨人からしたら、ほんの指先ほどなのだろうが…
アクセサリーにするには、もったいないくらいのすばらしさだ。
金でかたどられた台座に、銀色に輝く弦が、ピンと張られている。
さらには台座の所々で、きらびやかに輝いているのは…
おそらく宝石か、人口ダイヤの類のものが、埋め込まれているのだろう。
それをじぃ~っと、羨ましそうに見ていたジュンペイが、そのハープに
手を伸ばす。
「これって…ジャックが探しているお宝かも!」
目を極限にまで大きく見開いて、まばたきもせずに見入っている。
「なぁ~抜け駆けをしようぜ!」
へへへ…
嫌な笑い方をする。
「ダメだよ!そんなことをしたら、ドロボーだよ!」
裕太があわてて、ジュンペイの手を引っ張る。
するとどこからか、グオーグオーと、すさまじい地響きのような音が、
響いて来た。
「あっ、あれは…なに?」
思わずジュンペイの手が止まる。
「へっ?いびきなんじゃないの?」
耳を両手でふさぎながら、裕太が言う。
裕太は案外、慣れている。
音量は、この巨人の方が、何十倍もパワーがあるけれど…
たまに父さんが帰って来ると、とんでもない爆音の父さんのいびきを、
聞いたことがあるからだ。
(特に、お酒が入ると、すごいんだよな)
母さんは、その音を聞くと
「たまに、殺意を覚える」と言っていたのを、思い出す。
やっぱり巨人も父さんと一緒なんだなぁ~
などと、感心していた。
「えっ、あれがイビキ?」
動物のうなり声じゃないんだ?
巨人って、架空の生き物じゃなくて、本当にいたんだ…
(マーサさんも、巨人の仲間ではあるけれど…)
まだ見ぬ巨人に、驚いている。
「で、どこにいるの?」
思わず、キョロキョロとした。
この部屋は…暖炉とハープと大きな机があるきりで、目立った家具は
あまりない。
それに、肝心の巨人の姿が目に入らない。
(あれ?)
そんなバカな…と思い、音のある方に近付いて行く。
すると…暖炉の側のテーブルに、突っ伏すような恰好で、大きな男が
背中を丸めて座っているのが、目に入る。
(いたっ!)
思わず大きな声で、叫びそうになる。
それをどうにかこらえて、ジュンペイを見ると
(しぃ~っ)と唇に指をあてて、合図をしていた。
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