第289話 逃げろ!

 初めて見る巨人のデカさに、裕太は思わず冷や汗をかく。

(これって、もしかして…マズイ展開なんじゃないの?)

裕太はすぐに、逃げよう…と、ジュンペイの袖を引っ張る。

「おい」

巨人が寝ているうちに、早く!

そう思うのだけれども…

「何をするんだよ」

せっかく見つけたお宝に、目がくらんだのか、ジュンペイは

あらがうように立ちすくむ。

「ダメだよ、もし巨人が起きてきたら…」

出来るだけ、目に力をこめて、ジュンペイに小声でささやく。

だがジュンペイは断固として、折れる様子がない。

「巨人?巨人って、どこにいるんだよ」

まったく平気な顔をして、普通の声で答えるので、

(おい、ジュンペイ!)

「しぃ~」

裕太はあわてて、ジュンペイを後ろに引いた。


(なんだよぉ、何か、面白くないなぁ)

 たちまちジュンペイが、しかめっ面をする。

今までリーダーシップを取っていたのが、自分だったので、

裕太に指図されるのが、気に入らないのだ。

 そもそもこの部屋を見付けたのだって、この自分だというのに…

フン、と腕組みをすると、

「ほら!」

裕太は上の方を差し示す。

「いるじゃないか、あそこに!」

 ちなみにジュンペイが立っているのは、暖炉の側のハープの所。

裕太が指し示すのは、部屋の中央の机の上。

こうしてみると、学校の廊下の端と橋くらいの距離感だ。

なぁんだ。

ジュンペイがホッと息をもらす。

「寝てるじゃないかぁ」

だが裕太はあわてて、ジュンペイを黙らせようと、口にぐぃっと

手を当てた。

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